・…かたちが変わるんだよ、思い出ってやつは…想像力ってのは実に不思議なもんだ!おれのうちにあって、おれとは縁がない…想像力…そいつがいつも穴埋めをする… ・記憶ってものはな、…一家の神聖な地下の埋葬所みたいなもんだよ…生きている者よりももっとたく…
・人の成すことには潮時というものがある。うまく潮時に乗りさえすれば、運が開ける… ・…じっとしていては幸運などやって来ない。翌朝になったら、また前に向かって這いはじめよう。もし幸運が向こうからやって来ないなら、自分で幸運を作り出すために全力を…
・「動けるようになるまでは、俺が養ってやる」と応じた。「それが慈悲というものだ」<慈悲>義父のその尊大な言葉が、押し込めていたヘルガの感情を炸裂させたのだ。 ・誰にも隷属せず、海は、在る。ただ、在る。風に支配されると言えるだろうか。烈風によ…
・一つの生をあまりにも純粋に究極的に生きようとすると、人はおのずから、別の生の存在の予感に到達するのではなかろうか。 ・…時間と空間とを同時に見ていた。…この世界の裂け目を凝視していたのである。 ・時間とは輪廻の生存そのものである。 ・この世に…
・「時間のためさ!時間は、とりかえしがつかないほど速く過ぎるものだからな!」 ・「…書物というものは知識欲のさかんな人たちの目から遠く、鉄格子のかなたでかびくさくなってしまうものではなく、読者の目にふれて、ぼろぼろになるべきものと考えていま…
・…官位や地位のために仕事をするでのではなく、人間のためになる仕事をし、後の世の人々に多くの恩恵をもたらすような仕事をしてみたい。もしそれができれば、一介の技術屋で終わっても十分だと思っていた。 ・問題は多くある。しかし、恐れていては何もで…
「日本人男性はこうでなければならぬとするカチカチのこだわりに、…たったひとりでなぐりこみをかけた」(アートディレクター談) 「彼が作った『叫び』(という曲)そのものなんですね。歌で死にたい。歌で死にます。彼は、今もそのとおりに生きていると思…
・確かに信念を持つ者は美しい。信じた道に殉じる者の生き方は凄みを帯びる。…信念を持つこととそれが正しいことの間には関係がない。 ・自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。 ・…彼の哲学が完成品である必要はないのです。…我々…
・…古き書物は、それを正しく理解したときはには、短剣と同じように強いものです。私はそれから一つのことを学びましたーーそれは私が、…結局は、何ものでもないということです。私は鎖の一環、橋全体のうちのたった一本の竹棹にすぎません。私は偉大なる先…
・かしこい旅行者は、空想だけで旅をする。…こうした旅こそは、炉辺に坐ったまま、いながらにしてできる最上の旅であろう。夢を壊されることだけは、まず絶対にないからである。 ・ヨーロッパからは、おそろしく遠いし、サンフランシスコからでも、長い長い…
小島のしげみの奥から、影の一滴が無限の闇を広げて、夜がはじまる。 大小の珊瑚屑は、波といっしょにくずれる。しゃらしゃらと、たよりない音をたてて鳴る南方十字星が、こわれおちそうになって、きらめいている。 海と、陸とで、生命がうちあったり、こわ…
「人生は厭わしきもの 涙ー溜息 愛は移ろいゆくもの 人生は厭わしきもの そして…さようなら」 「ああ、人生よ、私を受け入れてほしい。-私を価値あるものとして欲しいー教えて欲しい。私は書いた。顔を上げた。庭の木の葉がざわめく。空は薄く青く、私は泣…
・パトラシエ(パトラッシュ)の胸に大きな愛が目ざめた。それは命あるかぎり一度もゆるがなかった。しかしパトラシエは犬なので、ただ、恩に深く感じていた。 ・‥犬はあまりの悲しさにそのそばに横たわって死んでしまいたかったが、子供が生きていて、自分…
・真のジェントルマンは、たとえ自分の全財産をすってしまっても、動揺してはならないのだ。金銭なぞはそれほどジェントルマンシップより低いものであって、そんなものに頭を悩ます必要はほとんどないのである。 ・…いったんこの道に踏みこんだ者は、雪山を…
・創世記はいまも続いている。 ・思考は、矢のように放たれたら、的を射る。注意しないと自分の放った矢で倒れることになる。 ・宗教はどれも神に帰る踏み石にすぎない。 ・人類が忘れたことを思い出すために祈れ。 ・神のへ道はいくつもある。 ・神の名は無…
・人間、生きているかぎり、なすべきことをやなねばならん。これが重要なことだ! ・ある人々の利益は、いつもだれか他の人びとの苦しみを代償として得られるというのが、当時のならわしだった。富は窮乏と迫害の上に増大し、生活そのものまでもが風向きしだ…
・勇気がある人間と恐れを知らない人間は違う。恐れを知らない人間は軽率だ。結果を考えず危険に飛び込む。…僕が必要とするのは、震えても一歩も引かない人間だ。何を危険にさらしているか自覚しながら、それでも前に進む人間だ。 ・地図帳のページをめくっ…
・それは彼の最後の情熱、最も激しく、揺るぎない情熱、彼を憔悴させた情熱、そして彼を死に至らしめるであろう情熱だった。『泣き言は言わないぞ』と彼は繰り返し自分に言い聞かせた。何世紀にも及ぶ抑圧が、アイルランドにあまりにも多くの苦しみと不正を…
・そう、ある日突然、僕はどうしても長い旅に出たくなったのだ。…ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が聞こえてきた。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の音は響いてきた。とても微かに。そしてその音を聞い…
・何ものにも、執着していてはならぬ。…物によって心をかえ、人によってことばを改めるのは、道心ある者のすることではない。 ・ただ、黙って、無心につくれば、よろしい。…食事は喰うものであって、理屈や知識の場ではない。 ・禅宗の僧たちはうまいことを…
・今回の旅でいちばん難しいのは中国と日本で、そいつが終わってしまったんですからね。あとはもうアメリカまで行けば、ヨーロッパみたいなものです。たいしたことはありません。 ・鉄道は文明と進歩の象徴であり、網の目のように荒野に広がって、これから建…
・現代でこそオリエント急行の旅は優雅なものですが、1930年代にロンドンからイスタンブール、さらにその先に列車で向かうことは現在とは比べものにならない危険を伴う冒険でありました。フランスから、イタリア、トリエステを経由して、バルカン諸国、ユー…
現し世の 姿うすらぎ 暗闇に 閉ざされゆけば 魂は いよいよ明るく さまよいし 旅路の果てに 故郷を 見いずるならん ・やがて五月になりました。新鮮な春の流れが山の上から谷間へと注いでいました。暖い日光は山の上に輝き、あたり一面は緑色になって、残り…
・…読者諸氏には、こう申し上げておこう。いつかオペラ座を訪れたなら、つまらないガイドなどつけずにゆっくり見てまわったほうがいいと。五番ボックス席に入って、前桟敷との境にある太い円柱を叩いてみたまえ。ステッキを使っても、拳でもいい。すると頭の…
・運命の女神たちが人間のそれを決定するとき、そこには憐憫もなければ公平感もない。 ・…母はわたしよりも冷静だった。「イエスさまはね、おまえがまず生きて、この世の運命を全うすることをお望みなのだよ」と、説いて聞かせた。その夜、母は…生れてはじめ…
そこには視界のすべてを覆って、世界と同じほど広く、高く、巨大で、陽光を集めて無窮の白さを放つものがあった。 キリマンジャロの頂きだった。 その時かれは自分が向かっているのがそこであることを知った。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 代表作「老人と海」の数分の一程度の…
・悪というものはピーター・パンのようなものだー永遠の青春という、身の毛のよだつような、いやな天性を備えているのだ。 ・素人はプロにまさるもう一つの利点がある。素人は無鉄砲なことができる。 ・人間性というものは奇妙なもので、心とはまったく無関…
「大きな瞳が虚無を映し出す」とよく言われていた沢田さんに注目したのは、ただシラケていただけではなかったからです。シラケを超えていく情熱を、歌やお芝居を信じることで、シラケているものを一生懸命生きて越えていくというメッセージを、表現行為に向…
・ジムを一番不安にさせていたのは、日本軍の怒りではなく、その辛抱強さだった。 ・…日本兵たちが崇敬の的であることに変わりはなかった。日本人の勇敢さとストイシズムがジムは好きだった。ジム自身は悲しさなど一度も感じたことはないのに、日本人の悲し…
・道路の両側はおおむね森だった。国土全体が瑞々しく豊かな緑色で覆われているような印象があった。…大きな翼を持った鳥が、地上の獲物を探しながら風に乗ってゆっくりと空を漂っていた。 ・湖はまるで運河のように、うねりながら細長くどこまでも続いてい…