至福の読書・魅惑の世界旅行

読書の海・世界の空  海外添乗歴30年  元添乗員の読書&海外旅行案内

秘境その他

ネパール「王とサーカス」米澤穂信

・確かに信念を持つ者は美しい。信じた道に殉じる者の生き方は凄みを帯びる。…信念を持つこととそれが正しいことの間には関係がない。 ・自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。 ・…彼の哲学が完成品である必要はないのです。…我々…

アジア「マレー蘭印紀行」金子光晴

小島のしげみの奥から、影の一滴が無限の闇を広げて、夜がはじまる。 大小の珊瑚屑は、波といっしょにくずれる。しゃらしゃらと、たよりない音をたてて鳴る南方十字星が、こわれおちそうになって、きらめいている。 海と、陸とで、生命がうちあったり、こわ…

アイルランド「ケルト人の夢」マリオ・バルガス・リョサ

・それは彼の最後の情熱、最も激しく、揺るぎない情熱、彼を憔悴させた情熱、そして彼を死に至らしめるであろう情熱だった。『泣き言は言わないぞ』と彼は繰り返し自分に言い聞かせた。何世紀にも及ぶ抑圧が、アイルランドにあまりにも多くの苦しみと不正を…

世界一周 「八十日間世界一周」ヴェルヌ

・今回の旅でいちばん難しいのは中国と日本で、そいつが終わってしまったんですからね。あとはもうアメリカまで行けば、ヨーロッパみたいなものです。たいしたことはありません。 ・鉄道は文明と進歩の象徴であり、網の目のように荒野に広がって、これから建…

クルーズ・船旅「海の上のピアニスト」アレッサンドロ・バリッコ

・何かいい話を心の片隅にもっているかぎり、そして、それを語る相手がいるかぎり、人生まだまだ捨てたもんじゃない。 ・わたしたちは壊してしまったものの弁償が何ドルぐらいになるかを計算して、時を過ごしました。額が大きくなればなるほどおかしくなって…

ワシントンDC「ソラリス」スタニスワフ・レム

・われわれは宇宙に飛び立つとき、どんなことに対しても覚悟ができている。孤独、戦闘、殉教、死ーなんでもござれ、というわけだ。…実際のところはそれだけじゃすまなくなって、結局、覚悟なんてポーズにすぎなかった、ということがわかる。…実際には、われ…

アラスカ「アラスカ物語」新田次郎 

・エスキモーたちがこのアラスカに住むようになって、何千年になるのか何万年になるのか彼は知らなかったが、その気も遠くなるような長い年月の間に彼等は、暗夜の航法を体験として取得し、彼等の血の中に伝えたのだと思った。それは渡り鳥が、天体の動きと…

アマゾン 「ヤノマミ」 国分拓

・…「文明」にどっぷりと浸かった僕たちにとって、深い森での暮らしは快適とは程遠いものでもあった。最初は川の水さえ飲めなかった。…空腹の余り、動く度に立ちくらみがした。仕方なく休んでいると、屋根から巨大な虫が落ちてきた。…蛾、蠍、ゴキブリ、、コ…

地球「ハチはなぜ大量死したのか」ローワン・ジェイコブセン

・花粉と花蜜を食糧にしている昆虫はおびただしい数におよぶが、八千万年ほど前、その一群であるハチがこれを特殊技能として発展させた。ハチ自体、その種類は二万種にもなるものの、花蜜採集の技を真に極め、人間がその技能を利用して文化を築くまでに至っ…

サハラ砂漠「わたしは猫になりたかった」西江雅之

ソマリアの砂漠では、朝、目覚めると「ああ生きている」と本気で思った。それから次に「今日は何か食べ物が口に入るかな」と考えた。そして、日中はわずかばかりの移動があり、一日が過ぎ、夜が来て、「今日も生き延びたぞ」と自分の生を確認した。そのよう…