至福の読書・魅惑の世界旅行

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地球「ハチはなぜ大量死したのか」ローワン・ジェイコブセン

・花粉と花蜜を食糧にしている昆虫はおびただしい数におよぶが、八千万年ほど前、その一群であるハチがこれを特殊技能として発展させた。ハチ自体、その種類は二万種にもなるものの、花蜜採集の技を真に極め、人間がその技能を利用して文化を築くまでに至った蜂は、たった一種類しかいない。セイヨウミツバチである。

・数週間ごとに新しいところに連れて行かれ、糖度の高いコーンシロップで気合を入れられ、殺ダニ剤と抗生剤を投与され、寄生虫に襲われ、外来種の病原菌さらされて、どんどんぼろぼろになっていった。

・…崖っぷちまで追い詰められたミツバチ…

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「気ままな進みようの舟の

 船長は蝶々で 舵手はミツバチで

 喜ぶ乗組員は この宇宙の全員!」

  エミリー・ディキンスン詩集

 2006年秋から2007年の春にかけて北半球を中心に四分の一のミツバチが消えた世界同時多発ミツバチ蒸発事件。蜂群崩壊症候群CCDと呼ばれる現象、それらの経過と原因を追及した本である。働き蜂とはよく言ったものだが、女工哀史蟹工船にも引けを取らないようなミツバチをとりまく過酷かつ劣悪な環境に驚愕させられる。

 世界シェア80%以上を誇るカリフォルニアのアーモンドは、こうしたミツバチ抜きには成り立たず、私達が普段何気なく口にしているアーモンドチョコやミックスナッツのアーモンドも、アーモンドの海原をくたくたになって飛び続けたミツバチのお陰である。

 日本最初のエコロジストともいうべき南方熊楠は、今から百年も前に強く主張していたそうだ。自然の生態系はまるで“曼陀羅”のごとく複雑に、かつ絶妙なバランスで成り立っており、一時的な利益のためにそれを破壊してはならない、と。

 むろんミツバチの問題は氷山の一角に過ぎない。他にも農薬や化学肥料に食品添加物、遺伝子組み換え等々 問題は山積みで、しかも既に取り返しのつかないところ迄来ている。長年に渡り見て見ぬふりをしてきた我々は、とうとうそれらを人類の問題として認識することすら止めてしまったかに見える。そしてそれは食品だけに限ったことではない。

放射能、電磁波がいかに身体に悪いかというのも、四十年前は皆大騒ぎしてたけど、今はもうほとんど語る人もいないよ。なんでかというと平和が長すぎて、恐怖を忘れたということなんだよ。恐怖を忘れれば、危険の感覚を持つことは出来ないという意味だ」

  執行草舟著「夏日烈烈」

「(原発について)…そんな安全を保障してくれる根拠など、どこにも存在していないこともまた、わたしたちはだれでも無意識裡には知っているのです。…同様の困難が自分に起こるかもしれない不安。わたしたちは分かりながらも、目を背けているのにすぎません」

  磯前順一著「昭和・平成精神史」

「地球上からミツバチが消滅したら、その4年後には人類も滅亡を免れない」

  アインシュタインの警告

「…浸透殺虫剤の世界は、何ともうす気味悪い。…ミツバチがせっせと巣に運ぶのは毒の蜜。やがて毒の蜂蜜ができあがる」

 生物学者レイチェル・カーソンの警告

 古代ローマ皇帝マルクス・アウレーリウスが書きとめたとおり、「蜂巣にとって有益でないことは蜂蜜にとっても有益ではない」のだろう。

「もう絶対絶命という場合でなければ、そういう生き物を刺してはいけない。でもそうなったら思い切ってやることだね。そして死ぬのを怖がってはだめだよ。何しろあたしたち蜜蜂がとても評判がよくて、どこへ行っても尊敬されるのは、勇気があって賢いおかげなのだからね。…蜜蜂というものは勝利を祝うこともなければ、長い間死者を悼むこともない。ひとりひとりが自分の誇りと苦しみを黙って胸に抱きながら、自分の義務と労働に精を出すのである。ふしぎな種族なのだ ~ 蜜蜂という種族は」

  ボンゼルス著「蜜蜂マアヤ」

 

以下、危険の感覚を取り戻すためにおすすめの4冊

レイチェル・カーソン著 沈黙の春 / われらをめぐる海

有吉佐和子著 複合汚染

柳澤桂子著 母なる大地

・岡田幹治著 ミツバチの大量死は警告する 

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「病気を克服し生命を守ろうとして医学が進歩したが、超高齢化社会や人口増加に歯止めがかからない。幸福を追求しようとして産業が発展したが、環境破壊や地球温暖化は悪化のー途である。自らの国を守ろうとして多くの兵器を開発したが、地球を破壊するほどの核兵器保有するに至った。人類はまさに、地球という乗り物を、知恵という毒針で何度も刺し続けるサソリのようである」

 原田隆之著「サイコパスの真実」

to be continued