至福の読書・魅惑の世界旅行

読書の海・世界の空  海外添乗歴30年  元添乗員の読書&海外旅行案内

ハワイ 「ホノルル」サマセット・モーム

・かしこい旅行者は、空想だけで旅をする。…こうした旅こそは、炉辺に坐ったまま、いながらにしてできる最上の旅であろう。夢を壊されることだけは、まず絶対にないからである。

・ヨーロッパからは、おそろしく遠いし、サンフランシスコからでも、長い長い船路の果てに、やっと行きつくのだ。それにホノルルという地名からしてが、なんともいえぬ魅惑的な連想をそそるので、事実はじめて着いたときは、ほとんどわれとわが眼を信じられないくらいだった。…なんのことはない、典型的な西欧都市なのだ。

・街を行く人々の群れは、ほとんど想像を絶した人種の陳列だ。…いわばここは、東洋と西洋の出会いの場所なのだ。…信じる神も別なれば、価値観も異っている。共通なものといえば、それはただ二つの情熱―愛と飢えだけだ。…空はあくまでも碧く、大気はあくまでも柔らかいというのに、なぜかこうした群衆の中には、火のように激しい情熱的なものが、まるで脈動のように波打っているのを感得できる。

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 サマセット・モームといえば、なんといっても彼の代表作であり、世界的な短編小説の傑作でもある「雨」が思い浮かぶ。雨が降り続く南国の、その湿度すら体感できそうなほどに上手い秀逸な短編。

 一方「ホノルル」は「雨」ほど広く知られた小説ではない。しかし最後に「う~ん、そうきたか…」と読者を唸らせる構成、話しの組立ては「雨」同様。しかし「雨」では、それ以外のタイトルが全く考えられないほどに雨が小説の中で絶妙な役割を果たしている一方、「ホノルル」ではその舞台をオアフ島・ホノルルから別の島に置き換えても全く影響しないであろうほどに話しはほぼ船中で完結している。従って日本人の多くが抱いているであろう、あの明るく楽しいリゾート・ホノルルをイメージして読むと全然違う。今風に言えばいわゆる都市伝説・地元民の言い伝えをテーマに「雨」同様、登場人物からすると知らなくてもよかったという結末、人間というものは…と考えさせられる佳作だ。

「…強調しておきたいのは、われわれの多くは実は真実なんか知りたくないということだ。…できれば真実を直視したくない。というのも、真実は往々にして苛酷なものだからである」

 片田珠美著「自分のついた嘘を真実だと思いこむ人」

    <アイ ラブ ハワイ>

 ハワイに一度でも行ったことがある日本人でハワイを嫌いになる人っているのだろうか。万が一いたとしたら余程の偏屈かへそ曲がりではないかと思ってしまう。とにかくハワイは理屈抜きに良い。初めてハワイに行って着いたとたん大好きになった、本当に着いて直ぐに。

 常夏の島ハワイというけれど赤道直下ではないから、夏と冬では思った以上の気温差がある。8月は「暑っ!」2月は「えっ?意外と涼しい…」という程度に異なる。そうはいっても気温と湿度のバランスが絶妙なので寝過ぎても目覚めた時に頭痛がするようなこともない(と聞いて大いに納得した)ワイキキはほぼ年中晴れているが、逆に雨の名所つまり年中雨という地域も存在する。小さな島だが変化に富んでいる。

 ハワイの朝食によく並んでいるパパイヤ、ライムをさっと絞って食べるパパイヤが大好きだ。いくらでも食べられる。(昔 現地のガイドさんが『ハワイではパパイヤはそのへんにいくらでもなっている、豚の餌だ』と言ったのが未だに忘れられないが…)またその昔ノ―スショアで食べたクアアイナのハンバガーが、それまで食べたハンバーガーの中で最も美味しかった。(その後にできた日本支店のハンバーガーとは全然違う!)…余談だが、米国のレストランに入ってこれといったメニューが見当たらない時、下手に肉料理・魚料理を注文するよりも、むしろ当たり外れが少ないハンバーガーを頼んだ方が間違いないという認識でいる…参考までに。

 ハワイといっても日本人ばかりなのはワイキキとアラモアナ位なもので、一歩外れたらやはりそこは米国、オアフ島以外の離島に行けば更に顕著、米国人ばかりだ。そもそもコロナ騒ぎで日本人観光客は激減、やっと終息したところで米国の物価上昇に加えて円安傾向が継続。残念ながら日本人にとって現在のハワイは、かつてのハワイほど身近な存在ではなくなってしまった。

 それなのに、こんなことを書いているとハワイに行きたくなってくる。だが、今のところ行くあてもなし、仕方がないのでモームが断言するように空想で行こうか…