至福の読書・魅惑の世界旅行

読書の海・世界の空  海外添乗歴30年  元添乗員の読書&海外旅行案内

2021-01-01から1年間の記事一覧

京都・横浜「昭和・平成精神史」磯前順一

「大きな瞳が虚無を映し出す」とよく言われていた沢田さんに注目したのは、ただシラケていただけではなかったからです。シラケを超えていく情熱を、歌やお芝居を信じることで、シラケているものを一生懸命生きて越えていくというメッセージを、表現行為に向…

中国 「太陽の帝国」 J.G.バラード

・ジムを一番不安にさせていたのは、日本軍の怒りではなく、その辛抱強さだった。 ・…日本兵たちが崇敬の的であることに変わりはなかった。日本人の勇敢さとストイシズムがジムは好きだった。ジム自身は悲しさなど一度も感じたことはないのに、日本人の悲し…

フィンランド「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上春樹

・道路の両側はおおむね森だった。国土全体が瑞々しく豊かな緑色で覆われているような印象があった。…大きな翼を持った鳥が、地上の獲物を探しながら風に乗ってゆっくりと空を漂っていた。 ・湖はまるで運河のように、うねりながら細長くどこまでも続いてい…

クルーズ・船旅「海の上のピアニスト」アレッサンドロ・バリッコ

・何かいい話を心の片隅にもっているかぎり、そして、それを語る相手がいるかぎり、人生まだまだ捨てたもんじゃない。 ・わたしたちは壊してしまったものの弁償が何ドルぐらいになるかを計算して、時を過ごしました。額が大きくなればなるほどおかしくなって…

モン・サンミッシェル 「ノストラダムス コード」竹本忠雄

・16世紀ヨーロッパのその時代は、「秘伝」などというものが「進歩」の名において切り捨てられようとする近代の夜明けでしたが、この時代潮流に逆らって生きることから一つの巨大な人生が始まったという点に、まず、興味が湧きます。 ・…自分のたどるべき方…

中近東「我が名は、ジュリー」沢田研二

…やはり僕はいまの仕事を大事にしたい。いまの仕事を続けながら、同時に普通の36歳の男として恥ずかしくない、一人で立っている…マトモな社会人でありたいという、そういう気持ちが強いですね。 …たしかに続けていくっていうのは大変なことだし、しかもただ…

プラハ 「ロボット RUR」カレル・チャペック

・…科学を用いて、神を引きずり下ろそうとしたのです。度を超えた唯物論者で、だからこそ、ありとあらゆるものを作り出したのです。どんな神も必要としないことを証明したかっただけなのです。 ・…そうやって人間なるものを捨て、ロボットを作ったのです。……

ワシントンDC「ソラリス」スタニスワフ・レム

・われわれは宇宙に飛び立つとき、どんなことに対しても覚悟ができている。孤独、戦闘、殉教、死ーなんでもござれ、というわけだ。…実際のところはそれだけじゃすまなくなって、結局、覚悟なんてポーズにすぎなかった、ということがわかる。…実際には、われ…

フランス 「ナポレオン自伝」アンドレ・マルロー編

・…運命には従わねば、とりわけ国家の要請には従わなければなりません。兵士は、軍旗よりほかのものに執着してはならないのです。 ・私には勉強する以外に手はありません。…十時に就寝、四時には起きます。食事も一日に一度だけ、でもこの節食は健康にはとて…

イタリア 「遠い太鼓」  村上春樹

・もしイタリアという国の特徴を四十字以内で定義せよと言われたら、僕は 「首相が毎年替わり、人々が大声で喋りながら食事をし、郵便制度が極端に遅れた国」 と答えるだろう。 ・ローマというのは はっきり言って巨大な田舎町みたいなところである。…ニュー…

コルシカ島「人間の土地」「夜間飛行」サン=テグジュペリ

《 人間の土地 》 ・彼の偉大さは、自分に責任を感ずるところにある、自分に対する、…待っている僚友たちに対する責任、彼はその手中に彼らの歓喜も、彼らの悲嘆も握っていた。…彼の職務の範囲内で、彼は多少とも人類の運命に責任があった。 彼もまた、彼ら…

セビリア 「カルメン」 メリメ

・ジプシーの目は狼の目 スペインの諺 ・水音をたてて流れている川には、水か小石が必ずある ジプシーの諺 ・セビリアへ行かれたことがおありなら、城塞のはずれのグアダルキヴィールの岸に立つ、あの大きな建物をごらんになったに違いありません。私にはい…

トロイ・ミケーネの遺跡 「シュリーマン伝」ルートヴィッヒ

・…たくましい天性は、こんな災難さえも、やがて福に転じてしまったのだった。…こんな不運に見まわれたものの、それは結局、運命によって仕組まれたぼくの幸福と利益のおぜん立てのようだった。 ・…神の摂理でまったく不思議なふうに助かったことが何度もあ…

アラスカ「アラスカ物語」新田次郎 

・エスキモーたちがこのアラスカに住むようになって、何千年になるのか何万年になるのか彼は知らなかったが、その気も遠くなるような長い年月の間に彼等は、暗夜の航法を体験として取得し、彼等の血の中に伝えたのだと思った。それは渡り鳥が、天体の動きと…

ボストン「緋文字」ホーソン

「暗い色の紋地に、赤い文字A」 ・…利己心がはたらく時は別として、人間性というものは憎むよりは愛する方を選ぶものだ。憎しみは、もとの敵意をたえず新たにかき立ててその変化を妨げなければ、除々にそっと愛情へと変りさえするものだ。 …憎しみと愛とは本…

アマゾン 「ヤノマミ」 国分拓

・…「文明」にどっぷりと浸かった僕たちにとって、深い森での暮らしは快適とは程遠いものでもあった。最初は川の水さえ飲めなかった。…空腹の余り、動く度に立ちくらみがした。仕方なく休んでいると、屋根から巨大な虫が落ちてきた。…蛾、蠍、ゴキブリ、、コ…

ルーマニア・トランシルヴァニア地方「吸血鬼ドラキュラ」ブラム・ストーカー

・地獄には地獄の価値あり。物を掘り下げて追及していく。この本能のかげに何かがあるとすれば、あとで厳密にそれを追求していくのが有益だろう。 ・…「自然の妙」が、なにか不感性の糸で織った袋をからだにかぶせ、それがなければ接触によって害をこうむる…

地球「ハチはなぜ大量死したのか」ローワン・ジェイコブセン

・花粉と花蜜を食糧にしている昆虫はおびただしい数におよぶが、八千万年ほど前、その一群であるハチがこれを特殊技能として発展させた。ハチ自体、その種類は二万種にもなるものの、花蜜採集の技を真に極め、人間がその技能を利用して文化を築くまでに至っ…

チロル地方~ドロミテ街道「五千年前の男」K.シュピンドラー

「イギリスの考古学者ハワード・カーターがツタンカーメンの墓の中で、石棺の蓋を開けて、あのファラオの黄金のマスクを見たときのような気分ですね」 本の著者でもある考古学者は、当時のインタビューで奇をてらって大げさな受け答えをしてしまったと振り返…

ラ・マンチャ地方「ドン・キホーテ」セルバンテス

・あくまでも重要なのは真理であって、その母たる歴史は時間のライバル、出来事の保管所、過去の証人、現在の手本にして教訓、そして未来への警告なのである。 ・運命というものは、人をいかなる災難にあわせても、必ず一方の戸口をあけておいて、そこから救…

ローマ他 「即興詩人」 アンデルセン

・逆境はきみを高めこそすれ、それにへこまされるとは何事だ! ・…わたくしたちは目の前におかれた運命の糸をつかむ自由はあります。けれども、その糸がどこに結ばれているか、それは知るよしもないのです。 ・生命をしっかりつかもう。その最後の一滴まで味…

日本「自死の日本史」 モーリス・パンゲ

・何世紀にもわたって…<意志的な死>に誘ってきたさまざまな道筋を注意深く観察した結果、わたしは今でははっきりとこう言うことができる...日本人の持つ あらゆる得のなかでもひときわ優れて美しい得はその生命力である、と。 ・<1336年湊川の戦い、楠木…

ルート66・米国「怒りのぶどう」スタインベック

・「できるかじゃなくて、やる気があるか。じゃないかね。…”できるか” なんて言ってたらなんにもできない」 ・この勇気はどこから来るのか。すさまじい信念はどこから生まれるのか。…その中にはひどく残酷なできごともあるが、人間への信念を永遠に燃えつづ…

インド「メメント・モリ」 藤原新也

「死を想え」 ・極楽とは苦と苦の間に 一瞬垣間見えるもの ・一生、懸命(いっしょう、いのちをかける) ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」 というコメントの添えられた大胆な写真に思わず息をのむ。その多くはインドで撮影された.。ロングセ…

ナイル河クルーズ「ナイルに死す」アガサ・クリスティ

・…ナイル河の黒光りした岩々をじっと見つめた。月の光に照らし出されたこれらの岩は、みる者に何かしら幻想的な感じを与えた。それはあたかも有史以前の怪物が身体の半分を水の中にかくして横たわっているかのようであった。 ・「とても見事な月だわ。とこ…

ラパス・ウユニ塩湖「ゲバラ日記」「革命戦争回顧録」チェ・ゲバラ  

《 ゲバラ日記 》 1966年12月31日 われわれの運動こそ南米大陸革命の新たなムリヨ『雄叫び』であり、革命の大義の前にはわれわれの生命など物の数ではないと答えた。フィデル(カストロ)からの心のこもったメッセージが届いた。 1967年6月14日 私は39才にな…

クスコ・マチュピチュ 「モーターサイクル・ダイアリーズ」「ふたたび旅へ」チェ・ゲバラ

《 モーターサイクル・ダイアリーズ 》 ・この「果てしなく広い南アメリカ」をあてどなくさまよう旅は、思った以上に僕を変えてしまった。 ・…ぬかるんだ地面を果てしなく何時間もさまよってから、いきなり林が消えて平地に出た。大きな鹿が流れ星のように川…

メリダ・ユカタン半島 「遠い落日」渡辺淳一

・(米国に向かう船中 先輩から米国の新しい本をすすめられ)古くても、シェイクスピアは英語の古典です。なにごとも、まず古いものから読んでいくというのが順序です。 ・(白人の悪徳について)…いつか、世界の物質的文明が同程度に達したときには、彼らの…

英国「日の名残り」カズオ・イシグロ 

・…それはそれはすばらしい田園風景が目に飛び込んでまいりましたから。…大地はゆるく上っては下り、畑は生け垣や立ち木で縁どられておりました。遠くの草地に点々と見えたものは、あれは羊だったのだと存じます。右手のはるかかなた、ほとんど地平線のあた…

米国「心臓を貫かれて」 村上春樹訳

・…僕らはみんな、僕らが生まれるずっと前に起こった何か、知ることを許されなかったその何かに対しての代償を支払ってきたのだ。結局のところおそらくそれは、誰一人その核心に手を触れることのできない謎として残ることだろう。 ・「おい坊主、死んだ人を…